八王子古本まつり

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第16回八王子古本まつり 特集「百薬」第16回八王子古本まつり 特集「百薬」

第16回 八王子古本まつり
特集「百薬」

2017.5.3-5.7 10:00-19:00(荒天中止)期間終了

第16回 八王子古本まつり SPECIAL LECTURE
森で出会う百薬たちの世界

ひにち:
2017.5.4 14:00-17:00
ところ:
となりわ / 八王子市横山町9-10
参加費:
1,500円 + 1 order (満員御礼)

第16回 関連ニュース・トピックス

公式レポート(第四回)SPECIAL LECTURE「森で出会う百薬たちの世界」

森の中に入ると、圧倒的な無力感

小川

小川

これは正直に言っておきます。「森のくすり塾」でお散歩会とかやりますが、熊もいます、普通に。僕も山に入るときはラジオとか持って行くし、常に気を張って「ここにいるよ」ってアピールします。それでも森の中に入ると、圧倒的な無力感を感じます。
こういう話をすると「それ怖いじゃないですか」って言われるけれど、車を運転してる時の怖さと変わらないです。ただ、山の中で熊の緊張感と対峙しているときのほうが、自分の身になっている感じがします。何かが鍛えられているんです。

坂田

坂田

わかる! これ、どう説明していいのか分からないんですけど。

小川

小川

たぶん「気配」じゃないかと。僕が怖がって歩いてるんで、その気配がどっかに当たって、はね返ってきてるだけなんじゃないかと思うんですけど(会場笑)

坂田

坂田

この前、夜、高尾山を歩いてたんですよ。「怖いな。でも戻るより、登ったほうが明るいんじゃないかな、いいや、登っちゃえ!」って、強引な一人登山をやっちゃったんです。案の定、途中で真っ暗になっちゃって。でも行くしかないので、どんどん登っていったんです。そしたらね、途中からゾワゾワするんですよ。

小川

小川

わかる。

坂田

坂田

これ、わかります?(笑)情けないくらい、体の側面がゾワゾワして怖くなってきて。その辺の棒を拾って、バンバンバン! って叩いても、異様に静かなんですよ。自然って、もうちょっとうるさいんです。なのに、あまりにもシーンってしていて。
しばらく我慢してたんだけど、耐え切れなくなって、もう棒を投げ捨てて「うわーーー!!!」って叫んだら、両側の藪がザザザザザザッ! って。ずっとイノシシに見られてたの……(会場驚)

でも、ちゃんとわかるんですよ。人間って気がつくものなんだなあ、と思いました。そういう感覚って面白いですよね。その時なにもなかったから、今こうして言えるんですけど(笑)

小川

小川

かなりレベルの高い話(会場笑)

坂田

坂田

スピリチュアルな話じゃなくて、暗くなったりして五感が弱くなると、その代わり体のどっかで危険を感じて「危険だ!」って指令を、体が出してくるみたい。

薬と名のつくもの中で、たぶん最高値

小川

小川

詳しくは、「ヒマラヤの宝探し」というブログを読んでいただきたいのですが、自然からとれる一番の薬は「熊の胆(くまのい)」だと思います。薬と名のつくもの中で、たぶん最高値です。やっぱり動物性のものはすごい。他にはマムシがありますが、僕、ヘビだけは苦手で……(会場笑)

熊の胆は、熊を撃ってすぐに切り裂いて、胆汁を取り出してつくります。こういう話をすると「熊がかわいそう」って言われることもあるんですけど、猟師さんたちは昔から命を賭けて山に入って、熊を撃って、熊の胆をとり、肉は食べ、皮は使い……。ずっとそうしてきたんです。

「森のくすり塾」に人が来なくなったら嫌だから、言おうかどうしようか迷うところなんですが、やっぱり正直に言うと、マムシもいます。だって山だもん。

坂田

坂田

いるよー。

小川

小川

地元のおじいさん達は「ちゃんと教えろ!」って言うんですよ……(会場笑)

坂田

坂田

マムシって、何回も見てますけど、思ってるより襲ってこないですよね。

小川

小川

あの……、良い子はマネしないでください(会場笑)

古老と出会う

小川

小川

僕、東京に来て偉そうに山とか森の話をしていますが、地元じゃぺーぺーです。地元の古老たちから見たら「頼りない若者がチェーンソー持って一生懸命やってるな」って雰囲気で頑張っておりますので、ぜひ手伝いに来ていただけたら嬉しいです(会場笑)

坂田

坂田

「森のくすり塾」行くとね、まわりのお年寄りがね、小川さんの世話をしよう、しようとしていて。小川さん、結構うまいことやってんなあ~って思った(笑)(会場笑)

実際に古老と出会うっていうのは、東京にいるとないですよね。
出会えるところに行くと、向こうは別に私たちに教えてると思ってはなくて、普通の暮らしの話をしてるだけなんですよね。

小川

小川

むしろ何か捨て去られてしまった知恵として「こんなこと興味あるの? みんな」って感じですよね。
僕ね、あんまり「ハーブ」とか「アロマ」ってやっちゃうと、古老たちと断絶が生まれると思うんです。横文字って古老たちには馴染みにくいところのようで。

坂田

坂田

そうそう、そうなんですよ。

良い森にはセンブリが生えている

小川

小川

森の中にある薬草って、「ついで」なんですよ。木を切るついでにセンブリを取ってくる、みたいなね。薬草が主役じゃないんですよ、森って。

センブリって、薬草としては、それほどの価値はないです。でも、森の指標になると思います。良い森にはセンブリが生えている。
やっぱり人が木を切らないと下草が育たず、そして人が歩いて道ができないと、センブリが生えない。センブリって道の脇に生えるんです。だから人が森に入らなくなって、センブリは絶滅しようとしています。

森って、僕たちが思ってる以上に木を切らないといけないですよね。

坂田

坂田

木を切るとね、森がガラッと変わります。もうびっくりしますよ。「みんな眠ってたんだ~!」って。

小川

小川

そう!

坂田

坂田

「お前もいたの!? お前もいたの!?」って。

小川

小川

広葉樹が「俺らの出番―!」って感じで出てくるんですよね。
あれ、すごいですよね。眠った状態で何十年、いや、何百年と生きているんですよね。

坂田

坂田

2000年以上前のハスの種が芽生えたってニュースもありましたね。
人間が考えてるように考えてるわけじゃないんだけど、植物たちにはすごい戦略があって、増える方法、人に運ばせる方法ってのを、長い歴史の中でやっているわけですね。

虫は虫で戦略があるわけですよ。毒がありそうなフリをする、とか(会場驚)おもしろいでしょう?
「アサギマダラ」っていうすっごいきれいなチョウチョがいるんですけど、食べると毒があるそうなんですね。鳥は毒があるチョウチョは食べないんです。そうすると他のチョウチョがアサギマダラの飛び方を真似するんです(会場驚)

アサギマダラはキレイな飛び方で飛ぶんですけど、それをね、別の「ゴマダラチョウ」っていうチョウチョが真似して飛ぶんです。でも食べられちゃうのかなあって思いながら見てるんですけど(笑)

薬草の文化が、今、止まってしまっている

坂田

坂田

すごい失敗を繰り返して残った知恵を失うのは、もったいないなって思います。きっとずいぶん昔にも小川さんみたいな人がいて、いろんな挑戦してたはずなんですよ。たぶん死んじゃった人もいて、そのあとの人が「もうちょっとアレしたら生きられたんじゃない?」みたいな失敗を繰り返して、薬って呼ばれるものが残ってる気がしたんですけど。小川さん、どうなんでしょうかね?

小川

小川

薬の歴史って、そこまでダイナミックなものじゃないんです。核となるものはずっと変わらず、確固たるものは受け継がれてきていますし。

僕が不満に思っているのは、薬草の文化が、今、止まってしまっていることです。具体的に言うと、みんなが薬草に触れてない。

韓国や中国、台湾は、薬や薬草に対する寛容さが日本とは違うみたいで、日本では許可なく販売すると薬事法違反になってしまう薬草が、向こうではスーパーに並んでいます。
例えば、大正漢方便秘薬にも配合されているダイオウ(大黄)。日本は「ダイオウ飲んだら下痢になった!」ってすぐに慌てるけれど、それは当たり前です。たぶん中国の人も言ってくれると思います。「そりゃそうだよ」って(会場笑)

ちなみにチベットは、副作用の概念が日本と違うんですよ。日本人の僕から見ると圧倒的な副作用だけど、彼らはそれを認識しないし、言語化もしません。だから「チベットの薬には副作用がない」っていうのを日本語に翻訳すれば「ある」となります(会場笑)

日本って、細かいことも見逃さない国です。それは日本の良いところだと思います。一方、チベットは寛容な文化をもった国です。僕はもう少し、その寛容な文化のほうに日本を押し戻していきたい。「ダイオウ飲むと下痢になるんだ」とか、「ゲンノショウコ飲むと便秘になっちゃうんだ」とか、素朴なところから文化を育てたいな、と思っています。

坂田さん、そういうのを一緒にやりませんか?

坂田

坂田

そうですね。一緒にやりますか。

日本の自然ってなんて優しいんだろう

坂田

坂田

私たちは何かを「知る」っていう時に「こういうのニュースでやってたよ」とか「ネットにこういう情報載ってたよ」とかって言うんですけど、実際にそのことを知っているのかっていうと、意外にちゃんと知らなかったりする。日本って、他のところには細かいのに、そういうところには寛容なんですよね(笑)
もっと自分の体を動員して、「身体的な知」というものを、もうちょっと求める。
日本人はそういうところ本来得意なはずなんだけどなー、と思ってるんですけどね。

小川

小川

そうですね。職人がいる国ですからね。

坂田

坂田

日本の山は、危険だけど、ほかの国に比べたら、ねえ? だって大型のネコ科いないでしょ?(会場笑)トラに会ったら終わりだもん。

小川

小川

ヒグマは別として、ね。

坂田

坂田

ヒグマは怖いけど、ツキノワグマだったら戦えば勝てなくもない、みたいな(笑)(会場笑)他の国の、トラとかゾウとかサイとか、無理でしょ? 一回ケニアのマサイの村に泊まったんですけど「ゾウが来たら死ぬからね~」って言われて「えー!」って(会場笑)あと、アリの巣を踏み抜いたら一気にぐわーっとやってくる、とか。そういう世界から見ると、日本の自然ってなんて優しいんだろう。

日本の自然は入りやすいですよ。入って、使う人が手を加えて、でも壊さないで、長く使うように向き合っていく、付き合っていく。そういうふうに、うまーくできてて。私たちは、そういう文化をもってるはずなのになあ。
めちゃくちゃ楽しいんですよ、それは。小川さんを見ていたら分かるでしょ? 私もそうなんですけど、体が震えるほどの知識を得るってのは、楽しいんです。だからみんなが、もうちょっと、そういうふうに思ってくれて、ここで「そうですね」だけじゃないで、小川さんのところに足を運んでくれる、とか、高尾山に来る、とか。ね?

小川

小川

やっぱり体験して語らないと、と思います。言葉に身体性がないと、僕の中で何かが不具合を起こすんです。

犀の角(さいのつの)で検索してください。上田の演劇シアターで、予定調和じゃないトークライブやってます。いつも本当に鍛えられています。僕は薬を通して多様な投げかけをしていきたいです。

チベットに行って彼らの問答文化に触れて「知ってるってなんだろう」って、つくづく思った。チベット人は、問いを人に投げかけて自分が知っているかどうか確かめうんです。本で読んで一人で知ってるということは、チベットでは知っているということにならないんですよ。

会場の皆さんからの質問に答えます

会場

会場

なぜチベットを選んだんですか?

小川

小川

あの……、この本(「僕は日本でたったひとりのチベット医になった ヒマラヤの薬草が教えてくれたこと」)を読んでいただけると一番いいんですけど……(会場笑)冗談です(笑)
今まで圧倒的に多い質問で、いつも違う答え方しています。今日はちょっとカッコいい答えをします。「ああ、そう」ってうなずいてくれると願いながら言うんですけど、意外と大きな決断したときって、理由は大したことがないことが多いんですよ。理由は後付けで。トランス状態っていうか、自分じゃない人間が決めてるような状態の時が大きな決断ができてる。

ちなみにチベットに興味はなかったです。ないからこそチベットのことを今こうして冷静に第三者的に語れると思います。チベットに対して偏った意見はあまりないです。

高崎駅三階の本屋さんで、たまたま「チベット医学」って本を手に取った。三千円の本だったので、本の前を行ったり来たりして。「ああ、もう電車の時間だ。えーい、買ってしまえ!」って買いました。それを一年後くらいにふっと見て、「これだ!」と日本脱出の言い訳にしたんです。

本に書いた通りにしゃべると、20代後半で新規就農というのをカッコつけてやってて。でもそんな簡単にうまくいくわけなくて、「農村投げ出してー」ってなったときに、「チベット医学を学ぶ」って言えば、なんとなくかっこいいじゃないですか(会場笑)圧倒的に言い訳でした。

でも世の中、言い訳が本当になっちゃうことがあって。言い訳のはずだったのに、なぜ俺はチベットに10年もいるんだろうって。長くやってる人って、それほどの思い入れなくやってきて、案外溶け込めちゃうんですよね。だからこそチベットの人たちのいいところも悪いところも全部見ることができたと思っています。

チベットでよかったなって思います。10年間も暮らせたのって、チベットだからじゃないかな、って。本にはいじめられた経験とか書いてますが、それは国や民族関係なく、どこにでもあることですから。

当時は色んなことが重なって、なんかボーっとしてた(会場笑)やけくそっていうか(会場笑)

同じような質問で「どうして森のくすり塾を野倉にしたんですか?」って聞かれることもあるんですが、選択なんかできないです、僕には。たまたま話がきたんです「ここ、どう?」って。僕が「ここが良い」って言ったわけじゃないんです。神社の隣の土地が荒れていて、どうにかしなきゃいけないって問題があって、「小川さん、どうですか?」って聞いていただいたので、「はい」って。

思い立ったが吉日です。ボーっとしている間に、上田に移住してください(会場笑)。考えてると移住できないよ。明日いらしてください。色んな予定キャンセルして来てください。そういうノリって必要だよね。

会場

会場

宿泊施設ってどうするの?

小川

小川

良い質問です(会場笑)まず、別所温泉が良いです。他にはゲストハウスができました。アースワークスゲストハウスっていう名前です。

「森のくすり塾」に宿泊施設はないんです。林業と農業を両立させるだけで大変で、疲れて宿泊施設まではできないです。でも、本当にいいところなので、ぜひ遊びに来てください。

僕、なんとVOGUE(ヴォーグ)に出たんです

坂田

坂田

ほら、この前見せてくれたファッション誌、なんだっけ?

小川

小川

あ、僕、なんとVOGUE(ヴォーグ)に出たんです(会場驚愕)最初にVOGUEからのメールを見たとき、僕も信じられなくて。嫁さんに「ねえ、VOGUEって知ってる? 取材以来のメールが来てるんだけど」って言ったら「何言ってんの、来るわけないでしょ、そんなの」って言われて(会場笑)本当に載ったんですよ。ちょうど1年前、2016年7月号に。カラーで2ページも(会場笑)

坂田

坂田

すっごいおしゃれな雑誌に、いきなり小川さんが出てくるの(会場笑)

小川

小川

VOGUEってすごいんですよ。異文化を取り入れようとしているんです。取材も面白かったですよ。

相手を通して自分を認識する

小川

小川

チベットから日本に帰ってきて驚いた。ガラス窓や鏡、色んなところに自分が映ってるんです。そこで、チベット社会には鏡がないことに気がついたんです。久しぶりに自分を見ると、「誰だろうこれ?」って思うんですよ。
自分の姿を見られるかそうじゃないかで、自分に対する意識は違ってくるんじゃないでしょうか。

チベットの人は、日本人と比較して自分というものがぼんやりしているんじゃないか。だから問答して、相手を通して自分を認識するんじゃないかと思っています。
最近のチベット人は鏡見てますけどね。

坂田

坂田

森に入ると、自分の存在も含めて曖昧なんですよ。生きるとか死ぬとかも全部曖昧なんですね。木は成長するのに100年も200年もかかるんだけど、どんどんキノコや微生物に分解されていく。死んでるかというとそういうわけでもなく、でも終わりつつある死。存在の在り方が曖昧で不確かで、そこにいることは結構気持ちいいって思うんです。

私、ナイトガイドもやっているんですけど、真っ暗になる前にスタートするんです。ヘッドランプも禁止してやるんですけれども。そうすると日が暮れるにつれて、だんだん物の境目が見えなくなる。段差とかわからなくなるんですよ。

でも物の境目が曖昧になってくると、ちゃんと認知して歩くようになってくる。段階を踏むと、ちゃんと認知できる。それを感じてほしいんです。

いつもいつも存在がはっきりしない。本来そういう在り方でいいんではないか、と思っています。